<< ヒトを分けるヒト。 年の始めの例験しとて、 >>
去るのは、わたくし。
2009年は丑年だそうで。

今は昔、2004年12月3日。
マルセイユは6区、ユダヤん商業区近くで見つけた牛、うし、ウシ、うっしっし。
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ヒトが作ったウシですし、ショウウインドウの向こうですもの。
臭くありません。


一寸先は闇。
今のココんちの東100m先の牛たち。
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整髪したスコットランド牛みたいな牛です。
よーく目を凝らすとはるか向こうに環状道路を走る車たちが見えます。この道路の近くには白黒のホルスタインがいつものんびりしています。


そして、ココんちとは旧市街を挟んで反対側の遊歩道の水辺で会う牛たち。
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たぶんシャロレ Charolais 牛。食用牛です。本当に美味ですが、こういう姿を見てしまうと食べられなくなりもす。


ココんち近所のウシも、ココんちから旧市街挟んで向こうのウシも神さまが作ったウシですから臭いです。風向きによってはココんちまで天然の田園の香り smell of country が届いたりもします。私の友人、英國びとは田園の香りが良い香りだと言います。一緒に北イングランドとスコットランドを旅した時、車窓から入るアノ臭いに鼻が気付いた途端、彼女は深く吸い込みました。「ああ、いい香り」と言いながら。私にとってアノ牛馬羊の臭いはたとえ飼い葉の香りが混ざっても匂いではなく臭いであり、深く吸い込む気持にはさらさらなれません。今も、いつも、おそらく残りの人生においてでも、です。けれど、この臭いを自分の知覚に届かないようにと空まで届く壁やら覆いなんてヒトには作れません。

仏蘭西の街づくりは基本的に旧市街から同心円状に広がっていく形です。同心円と同心円の外円の間は森であり、林であり、草原で、たいていは農作物を作る畑と放牧地になっています。ほら、モン・サン・ミシェル。あそこはモン・サン・ミッシェルの同心円と隣町の同心円の間が潮の満ち引きが激しい海沼があり、羊が放牧されていることで有名です。大西洋の海水で育った雑草を食んで育った、このモン・サン・ミシェル手前の沼地の羊の肉はこの上なく美味なのだそう。

話し戻って、ココんちはまさしく或る市の最も外円にあるのでたった100mほど先に赤毛のウシがぼーっといたりするのです。南の獣道の突き当りには猟犬の訓練所があり、南西の草原にはロバがいます。道路にはしばしば車にはねられたハリモグラが転がっていたりもします。風向きでどうしたって神の創造物の落し物やら体臭が届いてしまうし、犬の切ない遠吠えが耳に入っても来ます。春も過ぎれば周りは草原だから気持悪いほどのかたつむりがそこら中にうぢょうぢょとなります。一番外円だったココんちの先に家が二軒建ったし、なんと牛の放牧地のまん前にも小さなおうちが10軒近く建ちました。放牧地のまん前だと知って買ったり借りたりするのでしょうけれど、ココんちの場合は800kmも遠くから近所の様子も知らぬままココに引っ越してしまいました。今更不満を持ったところで、先住権というものがあるのなら引っ越すのは私ですね。

南仏にいた頃はやかましいセミの声、プロヴァンスとかげとコオモリが地上5階のココんちによく入り込んだものです。ああ、春先の数メートル連なる毛虫のパレード。あれは凄かった。

それでも、闇夜が訪れると降るほどの星を眺められます。
セミの騒音も、牛馬羊の臭いもどうやら美しい空を曇らせるものではないようです。
理想郷はこの世のどこにあるのでしょう? ...ありませんよ。
エクサンプロヴァンスに住んでいた頃、「摩天楼が見えないところに私は住めないわ」と言った渋谷のド真ん中に住む女子留学生の言葉を思い出しました。
互いに互いを哀れに思っているのか、羨んでいるのか。

le 2 janvier 2008, Basile
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by ma_cocotte | 2009-01-02 01:55 | 『?』なたわ言 | Comments(7)
Commented by らぴ at 2009-01-02 03:35 x
ma_cocotteさま、本年もどうぞよろしくです。
新年のご挨拶をと思って久しぶりにきてみたら、モーモー牛さんだらけですねぇ。ここ2年ほど義両親のフランス行きに同行していないのですが、周りがこんな感じなのでなつかしい(?)です。ただ、夏に行こうものなら隣の農家(牛小屋)からの「臭い」とハエに悩まされます。日本のど田舎で育った私もびっくりです。
なんだか今年はすごく寒いですね。カゼをひかれませぬように。またぼちぼち貴ブログにお邪魔しますので、よだれタラ~の記事をお願いします!
Commented by ma_cocotte at 2009-01-02 03:59
★ らぴさま、こちらこそ今年もよろしくお願いいたします。
へへへ、牛だらけでしょう?カメラを持って散歩を繰り返しているうちに、
いつのまにか写真貯蔵庫は牛馬羊や山羊の写真で一杯に
なってしまいました。丑年なので記念に。
うちは猫がいるせいか室内であまりハエを見ずにいますが、玄関を
一歩出ると夏場は車のまわりにハエがたかっていたりします。近くの
観光地の沼地近辺のおうちだと縦ロールのハエトリ紙が天井から
ぶらさがっていたりしますね。

仏蘭西びとは牛馬の扱いというか愛情の示し方が上手いと思いませんか。
私は触れないというか、緊張します。

とっころで、今年の寒さは異常ぢゃありませんか?
元旦のお昼前に外出しましたが身ぃよぢれました。
暖炉のあるおうちが流石に今年はうらめしやーです。


Commented by tama at 2009-01-03 09:08 x
「遊歩道の水辺で会う牛たち」はまるで、ミレーの絵のように、美しいですね。S,一桁生まれの私にはこういう風景はごく自然で、牛馬の匂いも若いときは気になりませんでした。ど田舎の我が家の裏は一面の田んぼ、その向こうは池。川にそつて、じゃぶじゃぶ歩いて池で泳いで、夕方まで田んぼでかくれんぼ。夏はハエ取りロールに蚊帳。手足はしもやけだらけ。それが普通の子どもの姿でした。馬や牛が道を行き、落としたものはお百姓が宝物をみつけたように、拾いにゆきました。畠の肥やしにするのです。勿論、トイレの汲み取りは肥やしつくりに大切な仕事だつたわけです。
そんな時代はS30年位を境にして、一変してゆきました。子℃もを育てるのが、むつかしかつた原因の一つに時代の激変というものがあつたとおもいますね。あまりにもかわつた環境に体がいつのまにか馴染んで、今は蚊一匹、やりきれなくなつています。
東京の中心からの移住では辛いこともおおいかと、想像するお写真でした。続きます。

Commented by tama at 2009-01-03 09:30 x
今年の干支の「牛」という字を東福寺管長さんが書かれたものを友だちからいただきました。
「牛  飲 水 成 乳」
 (牛の飲む水は乳となる)とありました。

解説ですが、
「対句は『蛇の飲む水は毒となる』であるが、我々人間も牛の如くに飲んだ水が牛乳となつて、世間を助けるように勤めねばならぬ」。と書いてありました。
世間ということばが出てくるところがいかにも日本的。蛇の飲む水が毒となるのはなんとも気の毒(これも毒)ですね。蛇は変容の象徴でもあり、蛇のかわを財布にいれておくと、豊かになるとか、いいところいもあるんですよね。

Commented by tama at 2009-01-03 16:35 x
訂正です。時代の変化の急激だつたのは30年代後半ですね。30年初期はまだお砂糖がでまわつていませんでした。コツペパンにサツカリン入りの紅茶らしきもの、それが大学での昼食で、皆同じものを食べていましたね。素うどん一杯かどちらかでしたね。電車の代わりに地方では汽車がはしつていました。冷蔵庫、洗濯機もまだボチボチといつたところ。でも心は希望に燃えていましたから、どちらが幸せなのかな~と考えてしまいますね。

それから「子ども」とうつたら「子℃も」とでてきました。訂正します。
Commented by ma_cocotte at 2009-01-03 16:57
★ tama さま、
ここの遊歩道はとても感じがよく、こちらの市のはずれから田園を
楽しみつつ、隣の町のはずれまでたどりつける道です。牛とは対面
には水面から歩道を挟んですぐクラシックな民家がぽつんぽつんと
あったり、水面すぐには釣り人のための小屋があったり、自然も
いっぱいです。
私が今住むあたりは酪農地帯、穀倉地帯でもありますが、以前
住んでいた南仏も養羊場がかなりあって、時に道路が羊の移動の
ために車が渋滞になったりもしました(仏蘭西の道路もカナダ同様、
家畜、野生動物優先みたいです)。
そうそう、両親の青春時代を知りたくて、「Always 三丁目の夕日」
のDVDを注文しました。来週には届くかなあ、と。建築中の東京タワー
が遠くに見える町でのお話だそうです。
Commented by ma_cocotte at 2009-01-03 17:07
★ tama さま、ありがたいお言葉をありがとうございます。
深い言葉ですね。11月に帰天されたSoeur Emmanuel が第二
ヴァチカンを境に自分は祈ってばかりいられなくなって、外に出された、
当初戸惑いがあったけれど、出されたことで今の自分がある、と
おっしゃっていました。自分が飲んだ水が栄養ある牛乳となって
未来を次ぐ子供や仲間の糧になるってすばらしいですね。
卵から生まれるものは自力で変容するものかもしれません。
蛇の抜け殻をお財布に入れてみたいけれど、ちょっとブルブル(笑。

少し前、YouTubeを見ていたら、子供の頃の学級名簿で電話番号の
後ろに(呼)がついていたと回想していたお笑い芸人さんがいました。
そういえば(呼)の字、覚えています。私の時代だと学生寮に住んで
いるとこの文字がくっついていましたけれど、今はマンション型寮が
主流だそうで。私は多くの友が寮生活経験者で、私もそれにあこがれて
かつてパリの寮に入り、友人が住んでいたエジンバラ大の学生寮にも
滞在しました。どこも集う場があって楽しいのに、マンション型寮に
なるとまた違う楽しみ方があるのでしょうか。
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