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今のうちにやっておかなくっちゃ。
今年の6月も残り一週間となりました。
どうも、今のフランスはせかせかしているのです。
この国に集う老若男女誰もが、まるで「不思議の国のアリス Alice au pays des Merveilles 」のウサギさんのように
Mon Dieu, mon dieu, je n'ai pas le temps!
ああ、どうしよう。時間がないっっ!
と上下にジタバタ、右往左往しているのです。
それもそのはずでガイジンの私にとっては 魔のおヴぁかんす までたった一週間、七日、168時間後に迫っており、世の中が機能しなくなる日までの目測ができるようになったから、仏蘭西びとがこの世の終わりと天国の始まりの日に向かって命がけで動いているのです。「この世の終わりと天国の始まり」を毎年6月の、しかも残り十日(実質、主日が引かれることで約七日)でジタバタ、火事場の馬鹿力を発揮する仏蘭西びとを傍観しているともそっと力の配分を365で割れないものかと思ったりするんですが、彼らの力はヴァカンスのために蓄えられており、余力で疲れない程度に働いているのでしょうね。ただし、庶民は、です。カードル(管理職)は残業でも、主日の違法出社をこっそりしてでも稼いで、稼いで、税金を凡な庶民のために納めてくらはいませ。

仏蘭西は事実上、6月が日本國の年度末の様相となり、ココんちの近所でも引越しが相次ぎ、先週末は玄関前に近所の坊が福引くじを買ってくれぃ、と突っ立っておりました。公立小学校の学年末恒例のお祭りでのクジ。2ユーロ。学校だけでなく、公営のプールやテニス、サッカー、乗馬施設、教会などどこでも年度末納涼会が催されるのも6月末です。日没が22時過ぎ、気候もさわやか、一年で一番心地よい季節でもあります。夕方になるとあちらこちらからバーベQの芳ばしい香りが鼻に届くのも今頃からです。

夏至の夜に催されるフェット・ド・ラ・ミュヂークでも街中のほうぼうで、地元の音楽やダンス関連の同好会の発表会を見物できたりします。素人演芸の域ではありますが、発表する人々の嬉々とした表情にこちらまでほのぼのとさせられることもしばしば。ところが今年の夏至は日曜日とぶつかったせいか、見物に出かけたものの、今ひとつの盛り上がりのように思われました。この写真 ↓ は21日夜10時過ぎのココんち地元の旧市街。
b0070127_1785352.jpg
盛り上がりにかけたのも6月18日から26日まで共和国内ではバカロレア試験が行われていることが原因のひとつであるかもしれません。試験途中にフェット・ド・ラ・ミュヂークというのも町に繰り出せば準備時間を失い、家に篭ったところで旧市街に住むならば騒音で勉強どころではなかったりします。
が、一夜漬けでなんとかなる試験ではないからね、バカロレアは。
以下、忘れぬうちに今年のバカロレアの哲学試験問題一覧 Les sujets du BAC 2009 en PHILOSOPHIE を、ヴぉわら。各自、希望専攻に基づき好きなお題を選んで、4時間で仕上げること。
▼文系 : Série L (littéraire)
- Le langage trahit-il la pensée? 言語は思想を裏切るか?
- L'objectivité de l'histoire suppose-t-elle l'impartialité de l'historien ? 歴史の客観性は、歴史家の公平を仮定しますか?
- Expliquer un extrait de "Le monde comme volonté et comme représentation" de Schopenhauer.  ショーペンハウワーの文献『意志のような、表象のような世界』の抜粋について説明せよ。
Extrait : "Le désir, en effet, la privation, est la condition préliminaire de toute jouissance. (...) Donc la satisfaction, le contentement ne sauraient être qu'une délivrance à l'égard d'une douleur, d'un besoin."

▼理系 : Série S (scientifique)
- Est-il absurde de désirer l'impossible ? 不可能が欲することは不合理ですか?
- Y-a-t-il des questions auxquelles aucune science ne répond ? 科学が答えられない質問など存在しませんか?
- Expliquer un extrait de la "De la démocratie en Amérique" d'Alexis de Tocqueville.  アレクシス・ド・トクヴィルの『アメリカにおける民主主義より』の抜粋について説明せよ。
Extrait : "C'est donc en chargeant les citoyens de l'administration des petites affaires, bien plus qu'en leur livrant le gouvernement des grandes, qu'on les intéresse au bien public."

▼経済社会系、Série ES (économique et social)
- Que gagne t-on à échanger ? 交換することで私たちは何を獲得しますか?
- Le développement technique transforme-t-il les hommes ? 技術開発は人類を改善しますか?
- Expliquer un extrait de "Essai sur l'entendement humain" de John Locke.  ヂョン・ロックの『人間知性論』の抜粋について説明せよ。
Extrait : "Je reconnais que les hors-la-loi eux-mêmes les respectent (l'équité et la justice) entre eux ; mais ces règles ne sont pas respectées comme des lois de nature innées : elles sont appliquées comme des règles utiles dans leur communauté."
以上、一般専攻のバカロレア試験における哲学問題で、6月18日午前8時から共和国内の331,575名の受験生が挑戦しました。そして以下は同日午後2時から行われた工業系または舞踏/音楽技術系専攻バカロレアの哲学試験問題で、今年は163,085名が受験しました。
▼工業系、Bac technologique
- Peut-on être sûr d'avoir raison? (自分の)判断に自信が持てるか?
- La technique s'oppose-t-elle à la nature?  技術は自然に反するか?
- Expliquer un texte de John Locke sur les liens entre la loi et la liberté
法と自由の間の関連についてヂョン・ロックの文献で説明せよ。

▼舞踏/音楽技術系、TMD (Techniques de la musique et de la danse)
- L'Etat doit-il garantir le bonheur des citoyens?  国家は臣民の幸福を保証せねばならないのか?
- Peut-on se passer de toute religion?  ヒトは全ての宗教を許せるか?
- Expliquer un texte de Henri Bergson sur la création et la création de soi  被造物と自分自身による創造物についてアンリ・ベルグソンの文献より説明せよ。
繰り返しますが、4時間で論文を仕上げてくらしゃい。

毎年、バカロレア試験は哲学試験で開幕しますが、26日まで他の筆記試験が続き、今年は7月7日に結果が発表されます。他の筆記試験も論文形式がほとんどです。今年の受験者において最年少は13歳3か月、最年長は78歳なんですと。私の場合、自分自身の13歳当時を振り返っても、78歳時を予想してもいずれにしても上の御題について4時間で論拠を立てての論文は書けませんわい。私は世界のどこであろうと三流の一流となって生きて行こうと思ふのだ。兎にも角にも、7月7日にご本人のタレントと努力が報われ、受験生の誰もがすばらしい今年のおヴぁかんすを迎えられますように。

同じ6月18日の夜、Canal + の看板番組ル・グロン・ヂュルナル Le Grand Journal の司会者が例の「赤毛のダニィ」ことダニエル・コーン・バンディ Daniel Cohn-Bendit だったのです。 他の放送局では味わえない面白さで私個人はうっかりムフムフしちゃいました。この番組でもこの日の哲学試験の御題に触れていました。
みんなたちもぜひぜひ → http://player.canalplus.fr/#/252219

le 23 juin 2009, Audrey
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by ma_cocotte | 2009-06-23 16:53 | 『?』な、お!?仏蘭西 | Comments(4)
Commented by annie at 2009-06-24 10:38 x
バカロレアの哲学試験問題、難しすぎる・・。
一体、何をどう答えていいのやら。
特に文系の「言語は思想を裏切るか?」と理系の「不可能が欲することは不合理ですか?」、問題文の意味自体がよくわからないんですけど?

フランスびとの皆様は、本番でこのような超難問と格闘するために
どんな試験勉強しているんでしょ?興味しんしんです。
Commented by ma_cocotte at 2009-06-24 15:45
◎ annie さま、
思ったことを書き散らすだけでなく、仏蘭西では文章構築というか論の
進め方に決まりに近いものがあります。日本の起承転結とは違います。
こちらの子供たちは小学1年にもなると討論を用いた授業などで知らず
知らずのうちに培われていくようです。
各自の考えに文章構築テクニックも加わっての採点だと思いますが、
20点満点とは言え、論文形式の試験の採点、点数くらい日本びとにとって
曖昧に見えるものはないかも。

4時間なんてあっと言う間ですよね。哲学以外も2~4時間の論文試験が
大学なんぞでは主流です。
言語は思想の全てを伝え切れるのか・・・と考えると、こうしてブログを
持っていると「伝え切れない」という結論が見出せたりもします。
(例の104項の件もそうではないでしょうか)
Commented by siojake at 2009-06-24 23:10 x
在住邦人の子育てブログ等で、
「幼稚園でもフィロソフィとポエジーがあってビックリした」
なんて書いてるのを読むと、お勉強感覚の根っこで既に日本と違うのか?
と思ったりします。

私の乏しい西洋でのお勉強体験でも、ヨチヨチの初心者レベルでさえ
話せ~・聞け~・とりあえず書け~、を容赦なくやらされていたし。
自由作文主体の週末テストってあーた、中一一学期レベルの仏語で
どーするんじゃ…でも、それこそがこちらの授業の進め方なのだと
腹をくくるまでは面食らいましたっけ。

只今ウチのご近所男子2名がバック中です。無事パスするといいなぁ。
Commented by ma_cocotte at 2009-06-25 02:42
◎ siojake さま、フランスの初等教育は知れば知るほど興味深いですね。
就業拒否もでき、その場合は月に一度、査察官が自宅に来るとか。
一方、公教育の場合は授業でも討論させたり、食事のマナーをしっかり
教えたり、プールも図書館も公営に移動することで社会性を身につけ
させたり、とすごい、すごい。
討論の進め方や、文章構築では物心つくかつかないうちから心身に
備えてしまった彼らがうらやましいです。こればかりは真面目に。
頭が固くなってから、言葉と文字による説明で叩き込まれてもなかなか
吸収できない自分が情けないです。

今年の結果発表は七夕ですが、よいヴァカンスを迎えていただきたい
ものです。早く動かないとアパルトマンや寮も見つけ難くなりまっせぃ。
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