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ロマの王様 Rois des Roms  
で、仏蘭西におけるロマはじめ遊牧民対策について世間で騒がれたせいか、22日夜10時50分頃から民放M6の Enquête exclusive アンケト・エクスクリュシヴ、=独占捜査という番組では一時間半に渡ってロマ族、ツィガーヌ族など旧遊牧民についてのドキュメンタリーでした。
Roms, tsiganes : des vérités qui dérangent
【ビデオ】http://www.m6replay.fr/#/info/enquete-exclusive/16258
【要約】http://www.m6.fr/emission-enquete_exclusive/03-06-2009-roms_tsiganes_des_verites_qui_derangent-12848348.html

日本語ではジプシーと呼ばれることが多い遊牧民は前世紀後半から仏蘭西語では gens du voyage(ぢゃん・でゅ・ヴぉわやあぢゅ、=旅する人々)と呼ばれますが、時に互いの生活にも関わる彼らを仏蘭西ではロマ、ツィガアヌ、ボエミアンなど各出身国別に細分化して呼ぶ機会が多々あります。この番組で主に取り上げられている部族はロマ族 Roms で、彼らの先祖はインド、遊牧の歴史の中でルーマニアに拠点を置いた部族と言われており、現在のルーマニアの国民の約1割がロマ族、そのうち約1万人が仏蘭西に入れ替わり立ち代わり出稼ぎに来ているそうです。

上のビデオの冒頭では不法滞在ゆえに警察の目から隠れているつもりで林の中で隠遁生活を送るロマ族共同体の様子も紹介されています。一日中、焚火を作り、水は汚水も混じる河川水を万事に使用。あの焚火が乾燥した木々の葉に移ったら、欧州の気候の場合、深刻な森林火災になりますが、彼らはそれを知らないし、教えたところで覚えようともしません。市や警察が彼らを見つけ出し、移動を促すと、拒否行動としてこれまでのバラック小屋をいっそう動けないように細工し始めたりもします。

このように数十人から数百人単位で彼らは仏蘭西共和国内の各地にインスタントな共同体を作り、その中には森林内など居住不法な土地を占拠していることもあるのです。この数日の仏蘭西政府によるロマ族を不法居住地から強く移動させることと、これらの方針に従わない彼らを故国(ロマ族ならルーマニア)に送還することは、上のビデオの中で彼らが作る焚火の火力の強さなど目の当たりにしてしまうと納得してしまうのではないでしょうか。

ルーマニアから仏蘭西に「出稼ぎ」にやって来た彼らは仏蘭西ではバラック小屋を自身でこさえて雨漏りにもめげず、上下水道もない環境でも加え煙草で、仲間内でバーベQを楽しんで飢えには至らない生活をし、それぞれがそれぞれの好みで市井で日銭を稼いでいるのです(主に街角や駅構内、列車内の物乞い、信号で待ち伏せしての押し売り車窓掃除や物乞い)。

さて、彼らのルーマニアの実家はというと、ほとんどの家が貧しくとも屋根、壁、床のある家屋で、電気も水道もあります。なぜこれだけの住環境があるのに仏蘭西でのバラック生活を楽しんでいるのかちょっこしわかりかねます。子供がいるのに親兄弟に子を預けて、夫婦で仏蘭西バラック生活をする夫婦もいます。子供が仏蘭西国内で生まれれば子供に仏蘭西国籍が得られることで、その子が成人するまで親は保護者として外国籍のまま共和国内に滞在できるということもあり、彼らは仏蘭西で子作りに励んでもいるようです。共和国内の市町村によっては兎に角、不法かつ居住に適さない土地に居座る彼らを移動させ、成人の就労研修義務と未成年の就学を誓約させ、月50ユーロの家賃で住まいを提供してもいますが、この約束に縛られること自体が彼らには苦手らしいです。それでも面接直後に役所は彼らに食事を用意していました。仏蘭西人の日常よりおいしそうな料理が並んでいましたけれど。


ここで世界にちらばるロマ族の制度について。
インドを源とし、ルーマニアを拠点とした彼らは欧州内に約1200万人散らばっていると言われています。彼らが「自由平等、勝手気ままな遊牧民」かと言うとそうではなく王制をしいているのです。
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↑ ロマ族(王国)の旗。インド国旗にそこはかとなく似ております ↑


ルーマニアのSibiuという町にロマ族の王 Rois des Roms が住んでおり、全てのロマ族の年貢により贅沢極まりない暮らしをなさっているのです。王さまの名前はフロラン・タナズ・シオアバ Florin Tănase Cioabă、1954年の生まれです。上に紹介したドキュメンタリーの中でもロマの王様の豪勢な生活が丁寧に紹介されているので、尚更
ムっとしてしまう
のですが、仏蘭西びとの判断ではロマ族の王制は欧州中世時代の王制に似ているそうです。王様はご自分の1kgの王冠も、メルセデスなど高級車やお城の調度品をお金に代えて臣民に分け与えようという考えはまるでなく、ただ年貢を待つ御身。

ロマ族の王様のお身の回りの何もかもがあまりにも贅沢で、一方、ロマ族の庶民のつましい生活の両方を見てしまうと、彼ら同朋の中での貧富の格差を少しでも狭めるのはルーマニア政府の役割ではないかと思うのです。

先週も仏蘭西からルーマニアに送還されたロマの人々が「国に戻っても職がない」と眉を縦にして嘆いていましたが、仏蘭西でも彼らには職がないけれど、彼らは仏蘭西で銭を稼ぐ術を知っているだけなのです。冷静に眺めればルーマニアという国そのものがまだEU内では発展途上にあり、EU内先進国がこれまでの中国工場をルーマニアや他の東欧バルカン諸国に移動することで救済を始めていますが、ルーマニアそのものが貧しいなら、ロマ族も雨風凌げる我が家を中心に生きることが倹しくも真面目でしょう。ビデオで見る限り、ルーマニアのロマ族居留区の生活は戦後直後の日本よりははるかによろしいです。

番組を見終えての感想は、フランスに出稼ぎに来るロマの人々はもしかして現実から逃避したいがために子供を残してでもルーマニアを離れ、喜捨の精神が残っている旧教国に行き、非現実を楽しんでいるように思えました。あんなに貧しいのに、仏蘭西では高価な煙草を止められない彼ら。どうして彼らが煙草を切らさず吸い続けられるのかさえ、私には疑問です。

貧しい環境を変えるのは他人ではなく自分の知と労ではないでしょうか。
戦後の日本復興が一例だと思います。
今も中世時代の王制の下で生きるロマ族の人々が倣うのは難しいのかな。

le 24 août 2010, Barthermy
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by ma_cocotte | 2010-08-24 03:18 | actualite 現時点の現場から | Comments(4)
Commented by 伊望 at 2010-08-28 13:51 x
>王さまの名前はフロラン・タナズ・シオアバ Florin Tănase Cioabă

あくまでも『自称』だそうです。
でも、それだけ豪華な暮らしが出来るのは不思議・サポートするジプシーがいるのも不思議。
まあ、ジプシー自体が不思議な人たちですからね。
Commented by ma_cocotte at 2010-08-28 16:42
+ 伊望さま、

身分についての自称なのでしょうか?
いちおう、現王は父親から世襲で、上に紹介したビデオでも
父王の葬儀の模様が紹介されています。

番組の説明だとロマ族の王制は中世の王制をなぞらえると
わかりやすいとのことでした。
ロマ族以外のジプシーの場合、背後にマフィアがいることも
こちらでは知られています。

つまり、彼らの世界の中のヒエラルキアの底辺は稼いだところで
お金は左右に流れて、自分のポケットには入りません。

この制度をなくすにしても、周辺の政府や教会だけで可能でしょうか。
やはりロマについてはルーマニアが主軸になるのが筋のように
私は現時点で見ています。
Commented by 伊望 at 2010-08-28 23:07 x
>身分についての自称なのでしょうか?

ルーマニアには彼に対抗して『皇帝』もいるようです(笑)
http://en.wikipedia.org/wiki/King_of_the_Gypsies
しかしこの記述によると Florin Tănase Cioabă とんでもない人ですね。

ルーマニアはルーマニアで責任を押し付けられても、何で自分の国だけ!と怒る様に思えます。インドへ帰れ!と言い出したりして-まあEUですからないでしょうけど-

ルーマニアに限らず多くの東欧諸国でも定住化政策を採って来ましたが、あまり意味がないようですね。フランスだけでなくてEU全体で考えるべき問題なのでしょうね。ドイツとかどのような問題になっているのでしょう?興味があるところです。どこの国も都合の良いところだけ利用されるのは癪ですよね。
Commented by ma_cocotte at 2010-08-29 00:57
+ 伊望さま
ドキュメンタリーを見た限りでは王さまは搾取し、私腹を
肥やしているだけでした。貧富の差というより、ロマ族世界を
二分したまま放置状態。

他の族(ツィガーヌやジタンなど)は族で問題があり、例えば
定住政策に彼らが従ったとして、政府が住まいを与えたとしても
その居留区で他の移民と時には殺人や放火などの深刻な事件を
繰り返したりします。

それ故、私などはマグレブやアフリカなど彼らに騙されている
移民からのグチも聞いているので、真面目に、盗みなどせず
暮らしている移民や難民に同情もしますし、政府がこれまで
彼らに対してできることをしてきたことも見ているので
カトリックや野党の意見について「甘やかしはいかん!」と
白けた思いしか持てなかったりもするのです。

いくら与えても彼らは満足しません。
反政府思想の左傾億万長者が彼らを背後で支援しているとも
報道されています。
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