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もう【お互い様】ではなくなってしまった。
昨日の、「ヒトが決めた国境」を越えて地球上の4か所で発生したイスラム原理教条主義過激派による連続テロが、先週木曜日から始まったラマダーン月と関連しており今後ラマダーン終了までテロが続くのではないかという予測を見聞しながら思い出したことがひとつある。
それは今世紀のはじめ、私が未だ南仏に住んでおり、職業訓練校で長い間、マグレブはじめとするイスラム教徒と日々を過ごしていた当時のこと、研修途中で彼らがラマダーンに入り、それについて彼らが「カレム Carême に入った」と表現したことだ。カレム Carême という単語はアラビア語でもなく、イスラーム用語でもない。これはフランス語で、カトリックの四旬節をさす単語だ。四旬節というのは復活祭まで日曜を除く40日を指す。キリスト教のカトリックや正教の世界ではこの四旬節に肉を断つ節制を続ける信心行がある。つまり、フランスに移民してきたムスリムの間でいつのまにかカレムという単語でラマダーンの断食を指すようになっていたことになる。言語を学んできた私にはこういう土着による言語の進化はとても興味深い。
その当時、フランスへの移民第一世代、第二世代の彼らが私にイスラム教徒の自分たちは今がカレムだけれど、欧州人のカレムもあるのだから「お互い様だ」と言ったことをよく覚えている。つまり、お互いさまだから互いの習慣を認め、受け入れろ、ということである。

イスラームの暦はユダヤ暦同様、欧米や日本の暦と異なり、日本の旧暦に近い数えで一年が成り立っている。だから、ラマダーンも年々ズレが生じ、数年前から真夏、そして今年は最も日照時間の長い月にラマダーンの節制月が重なってしまったことになる。イスラームはアラビア半島の、赤道近くで発祥した宗教だから日照時間の差異が年間通してほとんどないに等しいが、欧州に移住したら冬にラマダーンがぶつかった年と今年のように夏至にラマダーンがかぶさった年では断食時間の違いがかなり生じることになる。
イスラームの教えではラマダーンの間、日中の飲食を断つだけでなく、たとえば口腔内に生じたツバさえ飲み込んではならないという決まりがある。だから、ラマダーン月になると道にツバをはく移民を見かけることが多くなる。これも移民を受け入れた当時の欧州で摩擦が起こった原因のひとつだったりする。ラマダーンになると、南仏では当たり前だけれど公衆で喧嘩をするイスラム男子が増え、アパートのそこここの窓から口論の奇声が漏れることも当たり前。
彼らは日中、がむしゃらに節制を心がけるが、日没と同時に腹持ちの良いご馳走を夜明けまでにぎやかに食べるので、共同住宅ではイスラーム以外のひとびとが騒音で睡眠できないという問題もある。節制月なのに、この腹持ちの良い食事のせいでラマダーン月後に体重増加する信者の方が多いというのも事実。

さて、昨日のテロ事件。
イスラーム主義国のチュニジアはラマダーン月のはずなのに、半裸で美酒美食をあおる異教の欧州人を受け入れていることに聖戦(=この地球すべてをイスラーム100%にすることが目的)士と自称するISが立腹し、ああいう殺人を犯したのではないかという推察が飛び交っている。フランスで起こったテロについては詳細がまだ明らかになっていないが、犯人は雇用先の主の首を落とし、公衆に晒した。私見に過ぎないが、ラマダーンなのに日中仕事をいつもどおりに強いられていることに犯人がキレたことがきっかけになったのかもしれない。

たった10年ちょっと前、今世紀のはじめには「おたがいさま」と互いに寛容になれたカレム(節制)も、残念ながらカトリック側においてはこの10年ですっかり廃れたに等しい信心行になってしまった。一方、ISでは西洋習慣や教育を徹底否定し、ISに心酔するひとびとが異教の慣習を知る機会がまったくないと仮定すると、もう「おたがいさま」ではなく、イスラームだけが節制を守っているのに欧州人は年がら年中快楽し、イスラームを蔑視している、という被害妄想にメタモルフォゼしてしまっても仕方ない・・・それが今の欧州と地中海における問題点なのかもしれない。

ココんちあたりでも6月に入ると英国、ドイツ、オランダのナンバーの車が目立つようになる。彼らはヴァカンスで南下してきたのである。近年、フランスでも就学年齢の子供がいないひとが6月にヴァカンスを前倒しするようになった。6月だとヴァカンス費用が安くて済むからだ。
そういう事情もラマダーンとぶつかったことで今回の事件の災いになってしまったことが残念でならない。

le 27 juin 2015, Cyrille

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by ma_cocotte | 2015-06-27 20:51 | actualité 現時点の現場から | Comments(0)
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