<< 同じ大地で育ったキャベツです。 フランスではフランス語しかしゃ... >>
Léa ou Matteo レア~!マッテオー!
「レアーっ、待ってよぉっ!」と無理して読んでみる・・・なんのこっちゃ?

数日前、フランス共和国民の名前について法律で厳しく決められていること を話しました。1981年のカトリック聖人名以外の命名可能、1993年の偉人の苗字を名前にしたり、愛称を名前にする(例えばアメリカで定着化しているWilliam がBill、Edward がTedまたはEd、Christine がChrisなどなど)ことが可能になるなど命名の開放政策は共和国民に自由を与えておりますが、一方で先日の ジャニ・アリデさんちのJade ちゃん のように、Jade は翡翠で「石」だから「石」という意味のPierre ピエール(聖ペトロですな)のお祝い日にあてつけちゃえ!というカトリック側の「慈愛」の無理が生じている近年のフランス共和国なんでありますな。

お祝いできない名前があるというのは「自由・平等・博愛」の精神に反するとでも言うのでしょうか。
んで、まここっつぁん、あんたは早まったのか!?
 なんとおととい、フランスのニュウスをにぎわしたのが赤ん坊の命名についてでありました。フランスでは出産前に子供に与えたい名前を医師に伝えておくのですが、何でも来年2006年出産予定の親が登録した名前のトップは女児がLéa レア、男児がMatteo マッテオ んだそうです。レアは2005年度人気ナンバーワンに続く二年連続の人気名、マッテオは前年一位だったLucas リュカの座を奪った形だそうです。

ご参考までに2006年未来の共和国民(女児)の人気名ですが、
第一位 Léa  レア  ラテン語で「牝獅子」
第二位 Inès  イネス  ラテン語で「羊」
第三位 Chloé   クロエ  ギリシャ語で「若芽」
第四位 Emma   エンマ  ヘブライ語で「神は私達と共にいます」
第五位 Clara  クララ  ラテン語で「光」

私事でございますが、ココんちの♀猫の名前はイネスとレアでして、猫ごときにヨソさまのかわいいベイビーと同じ名前なんてぇのは申し訳なく思っている次第でございます。
・・・んですが、うちの方が2002年に命名しておりますのよ。おーっほっほっほっほ。

第三位のクロエちゃん以外はカトリックの聖人名でもあります。クロエはギリシャ神話に登場する妖精で、「西風」そのものだそうです。お祝い日は11月10日(カトリックではLéo レオ)。
イネスですが、17世紀長崎で殉教した日本の聖人の名前だそうです。今日の今日まで私は存じませんでした。ちょっとびっくり、いや、かなりびっくり。

さて、2006年未来の共和国民(男児)の人気名はこちらでござる。
第一位 Matteo  マッテオ 
第二位 Mathis  マチス
第三位 Enzo  エンゾ  Vincenzoの愛称。ラテン語で「勝者」
第四位 Lucas  リュカ  ギリシャ語で「純」
第五位 Hugo  ユゥゴ 
  ゲルマン語の「知」、フランス・コンテ地方の方言名、Hugues のこと
法改正直後の奇抜な名前からトラディショナルな名前に戻りつつある女児の名前に対して、男児の名前は過去愛称だった名前を正式名として与えている、1993年の法改正に則っているのが如実ですね。
そして昨年まで人気ナンバーワンだった2006年第4位のリュカですが、なんとこの方も長崎で殉教したドミニコ会の神父さまだそうです。大阪で捕らえられて長崎での処刑、この引き回しの刑は途中で耳を切り落とされたり生きながらの苦しみを多々味わったことで知られています。切支丹迫害はその内容を知ると怒髪天突きます。

日本語を母国語に、英語贔屓で育った私には、レアは焼肉加減、イネスは稲と酢、クロエは黒江(巨人の)、エンマは閻魔、クララは「のどの薬、顆粒」をどうしても連想してしまうのです。映画Grand Blue でジャン・レノが演じたEnzo も「円蔵」、スーパーマリオのルイジは「類次」ですね。Guy ギィは「ドアの開く音」、Guillaume ギヨームは業務、Thomas トマは「とんま」・・・止まりません。南仏にはイタリア発音の名前を持つ人が多いのですが、Bruno ブル~ノという名前もどうも腕に錨の刺青があるんじゃないの?とニヤけてしまうのです。

これからコウノトリが運んでくる赤ん坊、未来の共和国民の名前は「れあー!待っておー!」ですが、すでに税金を払いまくっているフランス共和国民の名前についてはいかがなもんでしょ。

まず共和国民女子部門第一位はMonique モニクで、約35万6千人の女性がモニクさんだそうです。続いてNathalie ナタリィ、 Catherine カトリーヌ、Françoise フランソワーズ、Isabelle イザベルと日本人としては「あら、昔読んだフランス文学で見かけた名前」と連想できる、いわゆる典型的フランス風の名前が上位を占めております。
そして共和国民男子部門第一位はMichel ミシェルで、63万3千人!第二位はPierre ピエール、Jean ジャン、Philippe フィリプ、Alain アランです。これまたフランス臭さ100%マックスの名前ばかりでおます。

日本では漢字を使って子供の名前に願いを込めたものですが、アルファベットしか使えない、ましてや聖人カレンダーの名前から選択することが決められていたかつてのフランス共和国民は聖人の行いや守っているものを「子供への願い」として子供に名付けました。日本で言う「先人、偉人の名前にあやかる」という感覚にあたると思います。

Monique モニク はかの神学者アウグスチヌス(フランス語ではAugustin オーギュスタン)の母親です。4世紀終わり頃、北アフリカに生まれました。当時はイスラム教が存在しませんから、北アフリカにキリスト教徒がいたことになります。夫は道楽者、オーギュスタンははドラ息子・・・夫の死後、モニクはどこぞの女性に子まで産ませてしまった愚息オギュたんを更正、息子と共に北アフリカからエルサレム経由でローマに上り、更にオギュたんを洗礼を受けるように導いてミラノの神学校にまで進学させ、その後この元愚息のオギュたんは世々に至るまで賛美される神学者、聖人となったンでありますな。てなわけで、モニクは「涙、な~みだの女の一生」を全うした女性なのですね。ですから昔のフランス人は女の子が生まれると「将来、良妻賢母になりますように」という願いを込めてMonique という名を与えていたのでしょうね。

そしてMichel ミシェル ですが、これは大天使ミカエル(Michel Ange、そう、イタリア語だとミケランジェロ!)です。三大天使の一人である彼は「戦いの天使」で、フランスの教会では変な青黒い顔のおっちゃんを足で踏み潰す羽を背負った美青年の像が教会の入口に飾られていることが多いんであります。「なんでかなあ?」と考えてみましたが、教会に物を盗みに入ろうとしてあの像を見るとビビる悪者もいるのではないでしょうか。んなことないか・・・。まあ、ビビった直後に引っこ抜いて古美術屋に売る図太さが彼らにはありますからね。
大天使ミカエルですが聖書では旧約のダニエル書に2度、新約のユダの手紙で一度のその名が登場します。悪魔の処遇を神にゆだねながらもミカエルは天軍の長なのでフランス人としては「正義と力」を息子の名に託すようなものでしょうか。
「正義は勝つ」ンぢゃないのか・・・。
おおよ、勝てるとも!
きっと勝てるよ。
・・・勝ってほしいなあ・・・。
フランスにはユダヤんも多くおりまして、彼らの場合フランス語のMichel またはヘブライ語のMikaël ミカエルと名付けられていますね。名前の国別派生も調べるとなかなか楽しいものです。

先日話しましたとおり、カトリックや聖公会、正教会の信者でない日本人にとって洗礼名は無縁のものなので、誕生日から逆引きして自分の誕生日に祝われる聖人が何をして聖人になったのか知る楽しみもあります。私の誕生日1月3日生まれの聖人は? 羊に囲まれたおねーさんジュヌヴィエーヴでした。

たとえばインターネットならサン・パウロ「教会の聖者たち」、きれいな挿絵が入っており丁寧に説明されています。


←本ならばこちら!
日本人でも宗教を怖がらずに気楽に読める聖人列伝でしょうか。
バースデイ・セイント 鹿島 茂 / 飛鳥新社


le 8 octobre 2005, Pélagie


【参考資料】
*France 2 : Le bébé 2006 s'appellera Léa ou Matteo
*いつものカトリック名祝祭日検索HP : http://nominis.cef.fr/

[PR]
by ma_cocotte | 2005-10-08 19:12 | 『?』な、お!?仏蘭西 | Comments(12)
Commented by uran at 2005-10-08 22:11 x
はじめまして。いつも拝見させて頂いています。興味深い内容で大変勉強になります。ところで、名前のことについて再びとりあげていらっしゃったのでこの際お伺いしたいのですが、『守護聖人』というのがありますよね。例えば、Sainte-Jeanne d'Arc はラジオ放送関係者の守護聖人、Sainte-Madeleineは美容師の守護聖人、その他、医者、建築家、恋人たち、25歳以上の独身女性の守護聖人(Sainte-Catherine)などなど、、。これらをもっと詳しく調べるサイトなどはありますか?自分の職業の守護聖人なんて、ぜひ知りたいなと思うのです。もしご存知でしたら、教えてください。よろしくお願いします。
Commented by ma_cocotte at 2005-10-08 22:22
■uranさま、はじめまして。
日本にお住まいでしたら、上の鹿島茂先生のご著書に聖人が何を守っているのか、書かれていると思います。365日全部ではありませんが、同じく鹿島先生の「フランス歳時記」もフランスで人気のある主要聖人の守護物がかかれていますよ(右のライフログに載せてあります)。

面白いですよね。先日の聖フランシスコは動物の守護聖人なんだそうです。
確かクリストフが旅の守護聖人だった記憶もございます。
Commented by ぴよよん at 2005-10-08 22:52 x
未来の人気の名前がもうわかるってさすがフランスですね。
日本ではせいぜい早くて2004年どまりです。
クロエが聖人名でなかったというのが意外でした。
いかにもおふらんすちっくな名前だと思っていたので…。
5位のクララですが、フランス語だとClaireになりますよね?
クレールよりクララのほうが多いんですね…。
クララというとハイジを思い出してしまいます。
マッテオもイタリアチックなお名前。
日本も外国語風の名前が流行っていますが、同じようなものなんでしょうか。
Commented by ma_cocotte at 2005-10-08 23:00
■ぴよよんさま。
私の知人にもクロエがいます。
とーってもSympa サンパ(感じのよい)お嬢さんですよ。
私の好きな名前のひとつです。

そうClara なんだけれど、これはラテン語ですね。
イタリア語だとキアラです。
カトリーヌ・ドヌーヴとマルチェロ・マストロヤンニの子供の名前がキアラです。
マッテオですが、調べても見つからないぐらいの造語っぽいです。
いちおうMatthew の愛称らしい。
第二位のマチスも。
このマチスは画家のマチスも指しているかもしれませんね。
1993年以降、有名人の苗字を名前にすることが認められているので。
Commented by akberlin at 2005-10-08 23:18
マッテオのドイツ語形がマティアス(Mathias, Matthias)ですが
ライフログに入っているポネットに出てくる坊やがマチアスだったなぁ、と。
嫌われているわりに、Hugoなんていうドイツ語形の名前は
人気の名前に入っていたりして、面白いモンですね。

大天使ミカエル・・・教会で仁王様の役目をしていたとは。
Commented by uran at 2005-10-08 23:21 x
ma cocotteさま
どうもありがとうございました。調べてみますね。
Commented by ma_cocotte at 2005-10-09 03:42
■akberlinさま、そう!ポネットの従弟がマチアスでした。
あの映画、主人公のポネット以外は皆本名で登場しているのですよね。
映画の舞台から想像するとドイツ寄りの山岳地帯のようなイメージもありますね。
Hugo はHugo Boss 効果かも。
ポスターがいつも格好いいです!

大天使ミカエルですが、多くの教会や修道院で入口そばに置いていたりしますね。
フランスだとLyon の大聖堂の丸屋根の上で
踊るように悪魔を踏んづけているミカちゃんが!
Commented by ma_cocotte at 2005-10-09 03:45
■uranさま、フランス歳時記がお勧めかも。
全員ではありませんが、面白いですよ。
聖人以外にもフランスの有名人の逸話が面白く書かれています。
月別というのも読み易いです。
Commented by Monica at 2005-10-09 21:55 x
Moniqueがそんなに多いなんて、ちょっと意外でした。
Marieあたりが圧倒的に多いのかと思っていたので。
Monique=良妻賢母・・・のイメージですよね~。たしか主婦の守護聖人
でもあったような。
そして、何と言っても彼女は、祈りの人!息子のために祈って、祈って、
祈り倒して、とうとう回心させてしまったのですものね。
フランス人の神父様に「モニカさん、アナタには祈りがタリマセン」と
言われたのを思い出してしまいました(゚ー゚;A
Commented by ma_cocotte at 2005-10-09 22:08
■モニカさま、また笑わせてくださる。
話がちょっとずれますが、私の知る司祭(モニカさんのご母校の向かい)は告悔当番を忘れまして、別の司祭とすれ違いさまに「すぐに告悔しなさい」と言われたという逸話があります。子供の頃は信者の子のみ学校の聖堂で定期的に告悔がありました。神父さまは子供に「さあ出たらすぐめでたしを100回祈りなさい」とおっしゃるのですが、子供は「めでたし」の4文字を100回唱えて聖堂を飛び出て行きます。かわいいでしょー。

Marieですが複合では多いですよ、やはり。
夫の母はMary-Magdelaine という珍しく英語筆記の複合名です。これ、マルレーヌという愛称で呼ばれます。彼女の友達はAnne-Marie という二番目に出てくるパターン。
複合名はいかにもフランスっぽくて好意がもてますね。

モニカは今回のエントリーで改めてその人生を省みると、日本人女性が同情を寄せそうな人生。みのさんに聞いてもらいたいような感じ(笑。
夫に泣かされ、息子に泣かされ、息子を更正し・・・いやいや。良妻賢母ですね、本物の。
モニカさんもきっとそうなんだ!と決めました。えっへん。
Commented by catseyepower at 2005-10-09 22:42
え、えっとー、みなさんがまじめなコメントを残されているのに、
こんなことを書いていいのだろうか、と思いつつ。
スーパーマリオのルイジという名前は、
マリオに似てるから....つまり「類似」をカタカナにしたらしいよ。
Commented by ma_cocotte at 2005-10-09 22:57
■catseyepowerさま、そうだったの???
Mario も Luigi もイタリアでは良く聞く男子名ですよ。
Luigi はフランス語のLouis の派生なんですって。
偶然とはいえ、あてはまるバックグラウンドがあるってもんですね。
名前
URL
画像認証
削除用パスワード
<< 同じ大地で育ったキャベツです。 フランスではフランス語しかしゃ... >>