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小さき花による「逆転の発想」
こんにち10月1日はフランスのカトリック暦によると ”Thérèse de l'Enfant-Jésus”、「幼きイエズスのテレーズ」という聖女の祝祭日です。日本國ではこの直訳よりも「小さき花のテレジア」という訳の方が知られており、女の子の洗礼名では常に人気の名前でもあります。

フランスの教会を訪問するとほとんどの教会にテレーズの像があり、この像を置いていない聖堂を見つける方が難しいくらいです。
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わが新天地の教会のテレーズ像(↑左下)です。たいていカルメル会修道女の服装で十字架と花束を抱え、薔薇色の頬を携えています。

なぜテレーズ像がフランスのたいていの教会にあるのかというと、彼女が聖マルタン、聖ジャンヌ・ダルクと並んでフランス共和国の守護聖人だからです。マルタンもジャンヌ・ダルクもはるか昔の「軍人さん」というイメージが強く、フランスにおいては全仏軍の守護聖人でもありますが、テレーズは彼ら二人のような「戦い」のイメージから程遠い聖女でもあります(だからバランスがいいのかな?)。

b0070127_23514336.jpgテレーズがノルマンディー地方のアランソンで生まれたのが1873年なので、このようなかわいらしい写真も多々残っています。4歳で母を癌で失い、二人の姉が修道女となったことなどがきっかけでテレーズも15歳の時カルメル会修道女になることを望みますが、年が若すぎると言う理由で拒まれてしまいました。が、その後のテレーズの熱望によって15歳にしてリジュー(Lisieux)のカルメル会に入会、その後一歩も外に出ることなく祈り、観想、労働の日々を過ごしましたが、まもなく肺結核にかかり、1897年9月30日、彼女は24歳で帰天しました。

若くして亡くなったテレーズが1925年に列聖されたのは異例の早さのように思えますが、それ以上に驚いたのが1997年8月の巴里でローマ教皇JPIIがこのテレーズに「教会博士」の称号を与えたことでした。生前のテレーズは同居の修道女たちからも「特別取り立てて言うべきことは何もしないヒト」という証言されるくらい地味な女性でしたが、テレーズが修道女になってまもなく院長から自叙伝を書くように命ぜられ、その自叙伝や彼女が遺した言葉や書簡が彼女の死後に出版、その誰にでも読みやすく分かりやすい内容から世界中でベストセラーになったことが聖人、さらには教会博士に列せられたきっかけになりました。

「教会博士」というのはローマンカトリック(=ヴァチカン)の聖人の中でも特に学識にすぐれ信仰理解において偉大な業績を残した人に送られる称号で、世間ではアウグスチヌスやトマス・アクィナスがつとに有名かもしれません。2006年現在、33名の聖人にこの称号が与えられています。フランスの教会では「パドヴァのアントニオ」も忘れてはならない教会博士で、ほとんどの教会に幼児を抱きかかえたフランシスコ会装束の天辺ハゲのおにーさん「アント~ニオ」の像が飾られています。

で、テレーズがこの世に残した言行ですが、上述の「教会博士」の定義からほど遠いものと言っても良いのです。なぜなら彼女が実践したのは「単純に神を愛する」に尽き、「優れた学識」から程遠いのです。「信仰理解において業績を残した」点が当てはまるのかもしれませんが、彼女に教会博士の称号を与えるにあたってはヴァチカンで「小難しいことを語れる方々」の間で多々「彼女の単純な信仰感」について議論されたとも漏れ聞いています。頭のいい人々にはテレーズの逆転の発想(つまり単純な愛)が「最良の神への愛情表現」である、というのがひっかかってしまったようです。彼女がこの世にいた頃、カトリックでは厳格主義を唱えたジャンセニスムの影響が根強く残っており「正義の神の裁きの恐ろしさ」が強調され、苦行と犠牲の生活を信者に強いたりしていました。にもかかわらず、彼女はこの厳格主義では人間は救われないということを言葉と態度で主張し続けました(と言っても修道院の中だけど。罪を犯したことでびくびくしている修道女たちに安らぎを与えることに彼女は徹底したのだにゃ)。つまりテレーズによりますと「人間は誰も弱く、小さな存在であり、そうした人間には苦行も犠牲もいらず、ただ幼子のように神への信頼に徹すれば良い、そうすれば神の憐れみのみこころはどんな罪深い人間にも注がれる」という単純な信仰生活を彼女が提示したのでした。それまで「難しいことを探究する」のがカトリックにおけるエラ~い人だったのに、彼女の単純な神への信頼と愛は1960年の第二ヴァチカン公会議の行方に大きく影響しました(←だろうねぇ(笑)。

私はルルドのベルナデットの生き方が好きで、「生まれながらにしてお嬢」のテレーズにはあまり興味を持っていませんが、昨今この世における宗教絡みの小難しい話がどんどん煮詰まってとんでもない方向に向っているのを見聞してしまうとどうしてもテレーズの思想を思い出してしまいます。テレーズが言うように独善的にならず、ひとりひとりが徳と修業を積むことが何より平和のために大事なことなのかもしれません。とは言ってもテレーズが唱える「単純に神を愛する」ことが決してきょうび流行の原理主義には至りません。

2000年の夏、私はテレーズゆかりの リジュー Lisieux に行きました。資料館に彼女がカルメル会に入会する時に切り落とした巻き毛が展示されていました。それは本当に美しい、たわわな金髪の巻き毛で、これを失う時のテレーズの気持を考えてみたけれど私なら「失いたくない」巻き毛だけど彼女にとっては教皇に懇願しても拒まれた夢が叶う瞬間で喜んで落としたものなのでしょう。

テレーズは生前、こんな言葉も残しています。
「もし私がナザレトの聖家族の家に行ってサラダと冷たい魚を出されたら、私はそれをヨセフさまにさしあげましょう。温かい料理と熟した果物はマリアさまにさしあげ、幼いイエスズさまにはスープと御飯とジャムをあげましょう。まずい物があったら、私が喜んでいただきます」。
・・・わたしにはできんな。
工務店経営のヨセフさんには申し訳ござーませんが、ガリラヤ湖名物の魚をあぶって一杯!したいです。せっかくのイスラエル巡礼だってぇのに。ねぇ?


le 1er octobre 2006, Thérèse de l'Enfant-Jésus


で、テレーズですが、聖人です。聖人と言えば「奇跡」!
私が子供の頃たびたび聞いた話は、「小さき花のテレジア」と言えば「死んだ瞬間に薔薇の花びらの雨を降らせたオンナ」でした(笑。その後何度か「彼女の棺の蓋を開けたら、お身体は朽ちていても薔薇の香りがしたそうよ」とも聞いたことがありますが、どなたかテレーズ・エピソードをご存知?テレーズの聖櫃巡礼はつとに知られてますがなあ。
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by ma_cocotte | 2006-10-01 23:38 | 『?』なKTOりっくん | Comments(14)
Commented by ぴよよん at 2006-10-02 09:58 x
以前住んでいたところの近くに「小さき花の幼稚園」というのがありました。
幼稚園の名前にしては珍しかったので「どうして『小さき花』なんだろう…?」とずっと不思議に思っていたので、今日のエントリで氷解!
ご新居の地の教会、すてきですね。
写真からするとけっこう大きな教会に思えますが、実際はどうなのでしょうか。
Commented by winter_mute at 2006-10-02 12:47 x
えーと、とりあえず浄土真宗者(なんじゃそりゃ)としての私などは、「小さき花のテレジア」に関する今回のエントリなどはかなりエスプリの効いたジョークに思えてなら無いんですが、あはは。

>工務店経営のヨセフさんには申し訳ござーませんが、ガリラヤ湖名物の
>魚をあぶって一杯!したいです。
ついでに死海のほとりのスパで優雅に週末を過ごしたいですね。もちろん、警備厳重なところで...

警備厳重といえばレバノンに展開中のフランス軍ですがかなりの重武装ですね。軍オタサイトでも評判になってます。
<フランス軍、レバノンへ機甲戦力を投入>
http://obiekt.seesaa.net/article/24415511.html
Commented by ma_cocotte at 2006-10-02 16:56
■ぴよよんさま、それはトーヨコ線の急行が止まる駅近くの幼稚園ですね?
私の友人はそこの卒園生ですわ。テレジア像が飾ってあるのかしらん?

新天地ですが、旧市街に大きな教会が3つあります。市内だと12の
教会、3つの聖堂(うちひとつはカルメル)があるそう。
この写真は丘の上にある教会で、夫が洗礼を受けた教会です。
教会というより町の観光名所っぽい扱いになりつつあるみたい。
ぼちぼち町の印象などもエントリーしたいと思っています。
Commented by ma_cocotte at 2006-10-02 17:01
■winter_muteさま、テレーズの思想ですが、浄土真宗の妙好人の
イメージに近いそうです。無学であるからこそ、深い素朴な信仰に徹する
ことができ、幼子の心に帰ることを強調できるというものだそうで。

仏軍はそうですね。
公表されていることは上っ面だけだと見た方がいいんぢゃないかな?
イスレバ内戦について日本の意見の流れは私には「?」だらけですが、
皆さん、真剣に語ってらっしゃるのでしばし様子を眺めることにします。
Commented by あぐねす at 2006-10-02 20:00 x
ma_cocotte さま、
ブログ再開待ってました!お元気そうで何よりです。今のところは、ブリオッシュがおいしいところでしたっけ?

そうそう、われらのアイドル、小さき花のテレジア(びよよん様のおっしゃってる幼稚園って、あそこかな、監督のおうちのすぐ近くの…)の奇跡、私がたまにのぞくサイトにあるかもしれません。googleで、”聖ピオ神父”って
検索すると、一番にでてるく”聖テレ-ズと聖ピオ神父の紹介”ってやつです。アランソンは行ったことがありますが、リジュ-はまだなので、いつか行ってみたいです。
Commented by ma_cocotte at 2006-10-02 20:27
■あぐねすさま、おひさしぶりでございます。
良い夏をすごされましたか?
新天地の名物のひとつが編み上げの巨大ブリオッシュみたいなのです。
スーパーに行くと山積みされているので驚きまくりました。

リジューのバジリカ聖堂内部はちょっとモンマルトルに似た感じかも
しれません。モザイクがすっごー・・・で天井を仰ぎっぱなしでした。
私には地下聖堂がなぜかしっくりしました。

秘跡についてのURLをお知らせくださってありがとうございます。
いろいろあったようですね。こういう記事を読むとトマ降霊だわ。
この目で確かめたくなります。(笑。

Commented by kanekatu at 2006-10-02 21:52
ma_cocotte様
お久しぶりです。
充電期間を終えられたのでしょうか、再開2稿目にしてma_cocotte節全開ですね。
暫く寂しい思いをしておりましたが、これから又楽しみが増えました。
(home-9)
Commented by ma_cocotte at 2006-10-02 22:26
■kanekatu(home-9)さま、おひさしぶりでございます。
北欧へのご旅行前にご挨拶して以来ですね。
恥ずかしながら充電と言うより放電状態のままでして、頭頂部が白髪
だらけになってしまいました。ハウス栽培のモヤシのごとくです。

ADSL開通まで2か月もかかり、使えるようになったところで2か月の
ブランクで心身追いつかず・・・てなわけで、徐々に本調子を取り戻せたら、
是幸ひ!です。よよよ。
Commented by ぴよよん at 2006-10-02 22:42 x
そうです、そこです!
あぐねすさん(はじめまして!)もご存知ということは、けっこう有名な幼稚園なのですね。
日本だと「キリスト教系幼稚園」でいっしょくたになっていても、実際はいろいろ宗派?があるのだと最近になってようやく気づき始めたところです。
Commented by ma_cocotte at 2006-10-02 22:58
■ぴよよんさま、やはりそうでしたか。
その幼稚園のHPを拝見したら、トップページにテレーズのご絵が
バッバーンと出てきました(笑。お子たちがかわいいのぉ。
Commented by 南 慈雨 at 2009-10-01 21:07 x
私の霊名も小さき花のテレジアです。みなさんの心がいつも主と共にありますように~アレルヤ
Commented by ma_cocotte at 2009-10-01 23:31
◎ 南慈雨さま、おめでとうございます。
よい一日になりましたでしょうか。
Commented by こひつじ at 2012-10-09 16:56 x
わたしの洗礼名も小さき花のテレジアさまです(*^ _ ^*)☆”

いつもわたしたちの心のうちに幼子のように神さまを信頼する
信仰をそそいでください。 ~ amen
Commented by ma_cocotte at 2012-10-09 17:29
+ こひつじさま

ようこそ、はじめまして。
洗礼名が「小さき花のテレジア」となりますと、ご幼少の頃の受洗でしょうか。
愛らしくも信仰強く、という願いが込められているのだと拝察します。
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