フランスには「新聞太郎」がいません。
もしかしたら仏蘭西は花の都お巴里には存在するかもしれませんが,おパリから800km南下した南仏には新聞配達員なんていません(ナンデモカンデモ「特別」な日系企業駐在員さまのお宅には配達されるンだろうけれど)。フランスの庶民にはそんな贅沢をする余裕は微塵もありまっしぇんので,ほとんどのフランス人は毎日自分の足で新聞を買いに行きます。売っているのは大都市ならば歩道に点在するキオスク,町村ならばTabac(たばこ屋さん)かLibrairie(文房具・雑誌屋さん)です。新聞を買わなくても公営図書館に行けばその日の新聞がすべて置いてあるので,新聞を買わずに図書館を利用しているフランス人も多くいます。

さてフランスの新聞ですが,日本の新聞以上にカラーがくっきりはっきりしており,それぞれの主義・主張・思想がぷんぷん臭いを放つほどのクセがあります。街角で他人が読む新聞の社名を見れば,その人の「ヒトとナリ」がほぼわかると言っても過言ではありません。例えばエクサンプロヴァンスにLes Deux Garçons レ・ドゥ・ギャルソンというこの町で最も古いカフェがありますが,その燦々と日の当たるテラスで葉巻をくわえ,髪型がヒラリーカットのガウヂャス・マダムが読んでいるのはLe Figaro,裁判所広場前のカフェで法衣を傍らに置いてくつろぐ弁護士や判事が読んでいるのはLe MondeあるいはLibérationです。教会近くのカフェに入ればLa Croix。カフェなんておしゃれなところではなくBarで競馬中継を見ながら珈琲立ち飲みのおっちゃんなら「La Provence」(南仏の地方紙)です。新聞を毎日定期購読している人ほど,自分と違う他誌を読む他人と考えを分かち合うことはまずありません。それほど思想が鮮明です。
フランスの主な新聞社の特徴は以下のとおりです。
Le Monde  中道左派系。
いわゆるインテリが読んでいる新聞。法曹界はもちろん大学のセンセもお好き。
Le Figaro  ブルヂョワ派系。
パリだったら16区や17区の最高級地区の住人がご愛読。南仏だったらニースやエクサンプロヴァンスの住人でしょうね。良くも悪くもスノッブな匂いがプンプンしています。上流階級のパーティ情報はこの新聞から・・・ですね。
Libération  ずばり派。
いわゆるミッテラ~ンな新聞です。第二次大戦時中は地下活動新聞でした。進歩的だそうだ。
L'Humanité  更にもっと突き当りまで左系。いわゆるひとつのまっかっか
驚くべきかな,ほとんどのフランス人は国歌斉唱もできれば「第一インターナショナル」も完璧に斉唱できます。2004年創刊100周年を迎えました。
La Croix  カトリック系。
宗教離れが進んでいるフランスとはいえ地道にまだ頑張っており,国民から一目置かれている新聞でもあります。国営放送France2毎日曜日午前の番組枠のパトロンでもあります。

上記以外,パリのLe Parisien, 南仏のLa Provenceの地方紙は庶民の味方。地元の情報満載です。特に不動産情報は充実!
この新聞各社の「カラー」を利用しているのが実はフランスのドラマ・映画です。ストーリーの中で登場人物に新聞を持たせることでその人物背景を観客に知らせる手法です。

b0070127_182663.jpg私が印象に残っているのはエクサンプロヴァンスのSCEFEEという語学校での映画の授業で「Marius et Jeannette マルセイユの恋(1997年)」を観た時のことです。レスタックというマルセイユで最も古き良きマルセイユらしいと呼ばれる地区を舞台に,もうどうしようもなくそこいら辺にいるおばさんとおじさんの恋を淡々と描いた作品です。マルセイユ方言も丸出し。主人公の女性は二人の子持ちだけれど,二人の子のパパはそれぞれ別の男性で,しかも肌の色まで違います。映画は主人公の恋愛が中心軸ですが,思春期を迎えた子供との問題,さまざまな過去を持った近所の人々の生き方などがある意味「つまらない」ほど自然に描かれています。この映画の登場人物の中に主人公の家のそばに住むおそらくパリ出身の女性が隣組のヤモメさんに恋をします。映画をぼーっと眺めていればこの熟年二人のエピソードも自然な恋愛の流れですが,これを前述の小道具・新聞で深読みをすると事情が変わります。女性がいつも手にしている新聞はHumanitéなのです。フランスにおける共産主義系新聞で,トロツキストやアナキストまでが読む新聞。一方,ダンディーなヤモメさんはLe Figaroの愛読者。Le Figaroはブルヂョワ系情報誌を兼ねた新聞です。だからこの初老の男女の恋愛はそうは簡単にはいかないゾっ!と小道具・新聞が暗示しているのです。
映画鑑賞後,教授がこの映画をきっかけに人物分析と称して新聞各社の思想の特徴分析に話を発展させたのは実に見事な関連付けでした。グーっとフランス生活の魅力に引きずり込まれたとはこのこと。

現在もそうですが,庶民生活を描いたフランス映画はアメリカ映画に比べるとエンターテイメント性に欠けています。現実にはありえない日常を描くのがアメリカ映画ならば,そこいらでありそうなことをこつこつ描くのがフランス映画とでも言いませうか。外国人の私にとってのフランス映画は「きっかけ」が掴めないととてつもなく「つまらないもの」けれど,ほんの数秒だけ目に入る小道具に気付くとストーリー展開の鮮明度が変わってしまうのもフランス映画ならではです。日本映画の現状はいろいろ規制があり,ストーリーの中で取り上げられる新聞社諸々の名前は架空であることが多いです。フランス映画における小道具の役割のオモシロさを知ると,日本映画ももそっと融通が効くようになって欲しいと思う「けふこの頃」であります。
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# by ma_cocotte | 2005-02-07 00:05 | 『?』な、お!?仏蘭西 | Comments(32)
Gâteau Yaourt -ヨーグルトのケーキ-
これ,フランス家庭における手作り菓子の代表 Gâteau yaourt ガトォ・ヤウゥ です。
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が,ヨーグルトの味はぢぇんぢぇんしません。
だけどヨーグルトでできているので『ヨーグルトケーキ』と呼びます。

作り方ですが,フランスは花の都お巴里の有名料理学校でディプロムを勝ち取ったマダムにドつかれること間違い無しのちゃんちゃらおかしいレシピですので,どうかひとつ,おうちのお台所でひっそりガハガハ笑いながら作ってくださいませね♪

こんにちの作り方ではなんと秤(はかり)を使いません。
バターも使いましぇん。

きょうびフランスはクレイマーなパパだらけです。週末は子供を引き取って過ごすことも多く,このどえりゃー簡単なヨーグルトケーキを子供と一緒に作って
Bravo, Papa!明日はホームランだっっ!」
とほめてもらっちゃうのです。それくらい簡単!

▼マツケンステップちょんチョちょん♪で作っちゃいヤしょう▼
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# by ma_cocotte | 2005-02-05 00:18 | Ca etait? | Comments(7)
これが「元祖」だす。-Savon de Marseille マルセイユ石鹸-
こんにちはキミガタに本物のマルセイユ石鹸を紹介しよう。
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← ← これが正真正銘

   元 祖。

左の白い石鹸はグリセリンでできたもの,右の渋緑色の石鹸はオリーヴオイルでできたものなのである。

さてだが,元祖まるせいゆ石鹸の定義を述べよう。
【其の壱】 正立方体である。
【其の弐】 無香料である。
【其の参】 オイル含有量が72%である。
【其の四】 立方体の各側面に石鹸の重量,オイル含有量%製造社名と『Savon de Marseille』の文字がはっきりと刻印されている。
以上。
試験に出すのでちきんとノートに書き留めるように。よろしいか?

・・・と,ここで終業のチャイムが鳴るのであるある。
「ノート,貸さないよ」
白のグリセリン石鹸は洗濯に向いていますが,緑のオリーヴオイル石鹸は万能石鹸と呼ばれています。72%ものオリーヴオイルを含有し,無香料なので,慣れるまではかなりクセのある匂いです。しかも使っても使っても減りません。
私もこの緑の万能石鹸を愛用をしています。最初,角張った立方体のため扱い難いのですが,使っていくうちに丸みを帯び,くすんだ緑の石鹸だったはずなのに緑の翡翠のような艶のある質感に変わる不思議な石鹸でもあります。身体をきれいさっぱりにしてくれるのはもちろんですが,この石鹸で洗顔するだけでマスカラなどしつこい化粧品も跡形なく拭い去ってくれます。これだけ洗浄力があるのに使用後はつっぱるどころか,むしろ肌がしっとりと落ち着きます。髪の毛もこの石鹸で洗っている人も多くいるそうです。ったくこの緑のキューブ,強いんだか弱いんだかはっきりしない・・・だからこそ万能なのか?

そしてこの素朴な元祖マルセイユ石鹸はスーパーマーケットでもなぜか石鹸売場ではなく洗濯洗剤売場に並んでいます。先日私が買った元祖マルセイユ石鹸は400gで82サンチーム(約110円,含TVA19.6%)でした。

★美術好きの方,そしてなぜか猫が好きな方もこれ(↓)をクリック!仏蘭西に古くから伝わるポスター絵です。Chouette!!!
http://www.marseillais-du-monde.org/affiches_p3.php3


Voici, Track Backs!
『くろねこ ちゃちゃ』 マルセイユ石鹸: http://blog.livedoor.jp/noirchat/archives/27862953.html
★『なごみネコとなごむ暮らし』 ♪できるかな、できるかな♪: http://nagomineko.exblog.jp/2257485

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# by ma_cocotte | 2005-02-04 02:27 | 『いいね。』 Chouette! | Comments(13)
たかが「治療」,されど「治療」
歯科診療所の待合室にて。
Allez, Pitchouns! (アレ,ピっチュウン!少年達よ!)
「写真,撮るよー。こっち向いてぇ!」といきなりカメラを構えたら,
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子供なりに慌てて・・・
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カメラの嫌いな坊やははにかんでうつむき,カメラ大好き坊やは笑顔で決まり!
かわいいやねぇ。

2月1日午後4時半,歯の治療の予約が入っていました。
昨年末,テレビを見ながらグミキャンディ Hariboを食べていたら奥歯の詰物がカッキーんと割れたのです。それをきっかけに歯医者さんに行ったら「こりゃ,詰め物をかぶせ物(クラウン)に変えないと近い将来大変なことになりますぜ,奥さ~ん」とドクターに宣告されてしまったのでありますね。新年明けと共に本格的治療開始と相成りました。

フランスは国家公務員でも民営企業勤務者でも16歳以上のナンピトも国民健康保険(Séculité Sociale)にまず登録します。この基本登録で20%の医療費を個人が負担します。更に希望者にはMutuelle ミュチュエルと呼ばれる互助制度があります。公営互助会と民営互助会など数社があり,自分で資料を集め,自分の希望に最も近い互助会に登録することができます。もし自他共に認めるバッリバリの健常者なら国民健康保険の登録だけで十分です。が,どこか健康に不安がある場合はミュチュエルに登録し,毎月会費を払うとミュチュエル傘下のClinique(クリニック 私営病院)で100%無料の診療を受けることができます。もし個人医院で診療を受けても自分の契約した治療範囲ならば,とりあえず20%の差額治療費を払うと,数日後にこの立替料金が自分の口座に振り込まれます。低額所得者(外国人留学生含む)には国家が定めた無料ミュチュエル制度があり,ほとんどの医院で無料治療を受けることができます。

さて,私ですが自称「まぁ健康」なので県営ミュチュエルの最低保証に登録しています。おらが町の市役所傍にこのミュチュエル直営の歯科医院があるので今回の歯の治療はそこに通っています。虫歯治療は私の契約では無料ですが,かぶせ物を作るとなると契約外診療になるそうです(うぇ~ん)。
その金額はコンピュータで算定されてプリントアウトされます。その金額に患者が納得したらサインをし,更にドクターがサインをして契約の成立になります。決して口約束がない・・・良い制度です。
で,私は1月4日から治療を開始し,右奥歯2本のかぶせもの122ユーロという金額で納得しサインをしました。が,先週25日の診療でふと気になったことがありました。私がニヤっと笑った時に後から二本目の奥歯がちらりと口元から見えるのです。型を取っていたドクターに「その二本目の歯は銀歯でしょうか?」と質問したら「そうですよ,奥さーん」と言う返事。私,考えてしまいました。もう結婚した身とは言え,
ニヤリと笑ったら口元から銀歯がギラリと光るおばちゃん・・・。
やだ,そんなの。そういう人相はもう数年後でいいのではないかしらん?と。そんな内心を秘めてドクターに後から二本目の歯の側面を白色にしたらいくらでしょう?と聞いてみました。286ユーロ(約38,600円)とコンピュータから返事が出ました。
・・・・っちゃーっっ,二倍強かあ・・・・。
私のへそくりに思いっきり響く金額です。頭が瞬間ぼーっとしてしまいましたが,「決めるなら今ですよ,奥さーん」と詰め寄るドクターの急かしにも遭い,「う・・・Ouiiiiii,ムッシュウ」と返事をしてしまいました。しかもドクターがおっしゃるには側面を白にすると元からある歯そのものの削り方が違うそうです。銀歯より更に削ってしまい,もう「やっぱり銀歯でお願い・・・」と言えない状況に飛び込んでしまった私です。(でも更に熟考したら日本よりかなり安い金額???しかもまったくわからないほど自然な歯が入りました!)

フランスの病院はどこも清潔で消毒の臭いもしません。内装も患者の緊張をほぐすような感じの良いものです。ドクターも皆Sympa(サンパ,感じが良い)です。そしてフランスの健康保険制度の在り方にも私はとても満足しているのですが,治療方法の説明を伺ったり,こういう金額もろもろの交渉がフランス語で続くと,「ニッポンに戻って治療を受けたい」とつい「まな板の鯉」気分100%の診察椅子に寝そべりながら思ってしまうのも事実です。・・・あ~あ。

ところでこの歯医者さん,Jean-Claude Gedjという名前です。苗字が Gedj とおっしゃる。
どう発音するのかも想像つきませんが,どこの出身かしらん?
苗字だけで世界巡りができるのもフランス生活の面白さです。
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# by ma_cocotte | 2005-02-03 05:11 | 『?』な、お!?仏蘭西 | Comments(4)
2月2日は『クレープを食べる祝祭日』-La Chandeleur
こんにち2月2日はLa Chandeleur(ラ・シャンドゥルゥ)と呼ばれるカトリックの祝祭日です。2月2日は12月25日のイエズスさまの生誕から丁度40日目にあたります。そしてこの日,なぜかフランスではクレープをむしゃむしゃ食べます。んまいんだな,これが。シードルでくくっとね。

これから書く話はなぜかそこはかとなく日本の昔からの習慣にも似ているので不思議な気分になりますよ。

イエズスさまは人生の最後3年間のみ,いわゆる後世で「キリスト教」と呼ばれる教えを伝え歩きました。が,この世に落ちてからその行動を始めるまでの人生のほとんどはユダヤ教の信者であり,その生活・文化習慣にの下で生きてきました。

さて,その当時(いや,現代もおそらく)ユダヤ教の教えでは出産した女性は出産後一定期間「不浄」であるとされていました。男の子を産むと40日間,女の子を産むと80日間という期間です。そして最初の子供は神に捧げ,つがいの鳩を献上します。イエズスさまを出産したマリアさまは出産後40日目に長男イエズスさまを夫ヨゼフさんと共にエルサレムの神殿に連れて行きました。その当時,エルサレムにはシメオンという老人が住んでいました。この老人は信仰厚い人で,聖霊から「神のつかわす救い主に会うまで死ぬことはない」と告げられた人でもありました。丁度マリアさまが「宮参り」をするその日,シメオンは第六感のようなものを心に感じて神殿に向かい,神殿でヨゼフさん一家に出会います。何がひらめいたのかこのシメオン老人はいきなりイエズスさまを抱き上げ,天に掲げ,「この子は異邦人を照らす啓示の,み民イスラエルの栄光であります」と宣言しました。

このエピソードは新約聖書のルカ福音第二章の22-39章に書かれています。シメオンがこんなことを叫んでもヨゼフさんとマリアさんが「何言ってんだか,このおぢいちゃん?」と意味がわからなかったことも聖書に残っているのも笑えます。そしてこのシメオン爺がこんなめでたい日にイエズスさまの処刑の預言をマリアさまに告げています。あらららら。

とにかくこの話がきっかけとなり,シメオン爺が宣言した「この子は光」の象徴として蝋燭の火が重んじられるようになりました。そしてキリスト教の信仰が土着し始めた5世紀頃,12月25日から40日後の2月2日がLa Chandeleur 蝋燭(光)の祭りと定められました。

というわけで年の初めにGalette des Roisをむしゃむしゃ食べ過ぎて「もう飽きたよ,ママン」な1月半ばにもなると,スーパーマーケットにはクレープを作るための小麦粉とCidre シードルと呼ばれるクレープに最も合うとされる林檎発泡酒が山積みされ,テレビCMも「小麦粉」だらけになります。

なぜ「蝋燭(光)の祭」にクレープなのでせう?
欧州のカトリック暦の多くはカトリックが布教される前の土着宗教暦と重ねられる場合があります。カトリックが早くから布教されたブルターニュ地方では昔から「黄金に輝く円形のクレープ」を太陽に例えており,太陽=光という関連でクレープを2月2日に食すようになったそうです。ふむふむ。

そば粉は主にしょっぱいクレープ(Galette ガレットと呼ばれます)に使い,小麦粉は甘いクレープ(これはフランス語でもCrêpe クレープ)に使います。フランス人が好きなクレープは意外にも白砂糖をかけただけの素朴なものです。
私はCassonade カソナァドと呼ばれる赤砂糖をかけたクレープが好きです♪

【追記】2月2日の祝祭日,マルセイユでは以前紹介したNavette ナヴェットを縁起物として食べるそうです。Navetteには「繁栄」の意味があるので,2月2日夜明け前からお店の前は大行列。一方で焼き立てのNavetteがカトリック教会に運ばれ,神父様から祝別を受けました。これで一年,商売繁盛!なんですって。
・・・やっぱりマルセイユって大阪っぽい。
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# by ma_cocotte | 2005-02-02 17:58 | 『冬』 Rien de special | Comments(7)