去年の3月23日。母の永眠の知らせからちょうど一ヵ月にあたるその日、私は或るところに行きました。週日の日中ならば二千人前後の人々が集うそこは、日曜日なのでしんと静まり返っていました。平日ならば開いている通用門は閉ざされていたので、高い塀づたいに坂道を登り、突き当たりの正門へ。正門はいつもどおり右横の、人がひとり通れるほどの幅の門だけが開けられていました。私がそこを抜けて数歩歩いたところで、少し離れたところから声をかけられました。振り返ると受付前に男性が一人、身を前に屈めつつ、こちらに向かって「記帳はココですよ」と。その方も記帳されている最中でした。久しぶりに足を運んだところとは言え、私にとっては勝手知ったる場でもあったので、その男性に軽く会釈して、ふらふらと思い出を辿るかのように散歩がてら歩いてみました。約束までの時間が少しあったので、この塀の中の世界について隅々裏裏まで知ってはいるものの、実は一方向だけ私があまりよく知らない西北方面へ足を向けました。右手のテニスコートと左手のバレーボールコートの間の並木道を歩くと突き当たり手前左にひとつの玄関。玄関の向こうに先ほど私に声をかけられた男性と他の数名の方がいらっしゃいました。どうやら日曜日のこの日、この玄関の向こうの世界のためにやって来た方々だったようです。この玄関の向こうの世界は社会福祉法人で、家庭の事情があって親家族と一緒に住むことが難しい子供たちが生活している世界です。日曜日ですから、面会に来る親御さんもいれば、休日という貴重な時間をここで子供たちと共に費やしてくださるしあわせな方々が次々と現れるのが常のようです。
この日から遡ること一年と10か月ほど。その日もやはり日曜日、この施設を訪れた一家族がありました。その当日より少し前、外国から日本に観光に来ているが(自分の)子ども達が退屈しているので一緒に遊べるとうれしいのだが、と連絡があったとも聞いています。世知辛いことに少々疎い職員たちは、ただただ善意を喜んで受け入れ当日を迎えました。依頼してきた家族を乗せた白いワゴン車のために普段は閉ざされている正門の大きな門が開き、車は正門を左に曲がり二番目の並木道を右に折れ、突き当たり手前の玄関の前に停まりました。ワゴン車から現れたのはこちらのご一行サマ ↓ そう、ぢゃいける・まくそん ( ̄ー ̄) ニヤリ ![]() それこそ神から与えられたまふタレントで比類なき一輪の花を咲き誇らせたマイコーが「退屈している幼い(私の)家族のために」と、自らを滅して日曜の閑散とした環境に現れました。そこでの数時間、大輪の花も、子どもたちも、ボディーガーズも屈託のない笑いを絶やさずにいられたと。 一夜明け、朝からこの一家の主が江戸のハズレまでお忍びしたことが話題となり、この家族の善意を受け入れた園長 マイコーの来訪から2年と4か月ちょい後。私は東京都下の某所でこの園長 この施設に訪れる人々は時に知られた名の花であったりもします。が、花の名が有名であろうと無名であろうと、その花から施設に届けられる善意に変わりはなく、ただただその花が勇気を持って動いて作り出し、捧げてくれた善意に感謝するばかりなのです。マイコーが遊びにいらしたように、2002年には こんなこと もあり、最近は こんなこと もありました。こうしたあらゆる善意を知り、私が思い出す言葉はイエズス会総長アドルフォ・ニコラス師の言葉です。以下、再掲 になりますが、一部分だけ。 神の夢を抱いて 私たちの周りを見回すと、夢を売る商売をしている人々が数多くいます。しかし彼らの売る夢ははかなく消えてゆく夢、ちっぽけな夢です。今日の世界で一番強く求められているものは、もっと壮大な夢を見てその実現を目指す才能です。お金では買うことができない夢、言い尽くすことができない夢を生み出す力です。きっと私に求められていることがある、きっと私が心をこめて、力を尽くして貢献できることがある、という夢を抱く力です。その夢は、心の渇きをいやす夢、人間らしい生き方を追求する夢、正義を求める夢、自分が受けた素晴らしいものを分け与える夢、愛と平和の共同体を創り上げていく夢、一人ひとりが神の子として大切にされる社会を構築する夢です。しかし、このような夢を実現することは容易なことではありません。(中略)この希望に生きる人の特徴の一つは、自分だけが希望を持つのではなく、他の人にも希望のともしびが点るように奉仕することです。(中略)たとえばソーシャルワーカーとして働くならば、その働きによって自分自身も変えられながら、現場で接する人が変えられて行くように働く。自分にとらわれず、もっと共同体を大切にする人、物心両面で分かち合いを大切にする人に変容するように促すのです。(以下、略) マイコー、ありがとう。 マイコーは「神の夢」を示したひとりだと思います。Michael Jackson という名が冠せられたタレントで得たものを、自らが無名と化して、分け続けた。何も無名にしなければ、自らの名にいっそうの箔を貼れたでしょうに。 スォルMが信頼する聖人がこのような言葉を残しています。 この世では、私たち自身の、また、他の多くの霊魂を救うために絶え間なく働こう。休むのは幸いなる永遠の世界で。マイコーは永眠する前夜もロンドン公演の練習に励んでいたと聞きました。マイコーの噂は数あれど、もしかしたら真実はその逆で、マイコーは他人を思いやりすぎて、自分の心身に厳しすぎたのではないか、と。どこか不器用に生命とタレントを他人のために消耗してしまったのではありませんか?マイコーの善意にどれほど天地の花々が今も感謝していることか。 マイコー、どうぞゆっくり休んでください、幸いなる永遠の世界で。 le 28 juin 2009, Irénée ■
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by ma_cocotte
| 2009-06-28 23:32
| 『?』なたわ言
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Comments(2)
![]()
マイコー、あなたはありのままのあなたでいて欲しかった・・。
整形なんかしなくても良かったのに。 薬漬けになってしまった(と思われる)晩年を思うと、 本当に悲しいです・・。 でも、エンターテイナーとして一時代を築き上げた彼の作品は、 これから先もずっと、残っていくことでしょうね。 安らかにお休み下さい・・・。
◎ annie さま、そうですね。
私はスリラーの頃のマイコーが大好きです。 かなーりの美男子だと思うのです。 マイコーに限らず、一度、人工的にメスを問題ない身体や顔を入れ、 いぢりはじめてしまうと止められない症例がかなりありますよね。 日本國の人工の某姉妹などもそうですよね。心理的に何か作用が あるのでしょうけれど。私も首を伸ばしたい、頭蓋骨を削りたいなど 思ったりするけれど(爆笑)、ああ、頭も良くなりたい。どれもメスと糸では まだ無理そうです。クスリも必要だけど、頼りすぎると自分を見失いそう。 気をつけなくては。 マイコーと同じ時代に生まれたこと、感謝です。 私はコンサートも行けたし、TDLのアトラクションも何度も楽しめました。 マイコーはたくさん種まきしましたね。昨晩、こちらでマイコーのプライヴェートが 紹介されたけれど、優しい、優しすぎた方だと思いました。 単純に浮かんだ私の印象に過ぎないけど。ご自分に厳しく、痛めつけても しまったのではないでしょうか。マイコーの魂が今は平安の中にありますように。
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